「尊、尊いと書いてみこと。私の大事な子」



それは、おれに全てをくれた人の言葉。
おれは居場所がない野狐で。
もちろん人間には見えないし、妖狐の仲間なんていなかった。


そんなおれを、神使として拾ってくれたのも、尊という名をくれたのも土地神である巴(ともえ)だった。



今から100年は昔の話。




「俺が先に巴様の神使をしていたのだ。だからお前は俺の部下だ」

「え、やだ!おれは巴のいうことしか聞かないよ」

「は⁉︎お前、それでも神使か!巴様のことを呼び捨てになさるなんて!」

「巴がいいって言った!」



巴の側には、おれより先に白銀がいた。
おれは先にいたからと言って威張り腐っている白銀に腹が立ってた。



巴への想いは誰よりも勝ると思っていたから。