嫌がらせの犯人だった女性は、楠木さんというらしい。
遊佐先輩がピシャリと言い放って出ていった後、周りの人たちのひそひそ声の中に聞こえた名前。


名前すら知らなかった人。
彼女自身、私の名前を知っていたのだろうか。




私は、尊を探して歩き回っていた。
遊佐先輩に止められ、我に返ったミコトは遊佐先輩が言い放った後すぐに飛び出して行ってしまった。




ちゃんと、止めてあげられなかった。
尊、傷ついているかもしれない。



せっかく人間を少しでも認めてもらえそうだったのに。
いい人間もいるってわかってもらえはじめていたのに。




「いた・・・。尊」





私の会社のあるフロアのエレベーターホールの隅で尊を見つけた。
その姿は耳と尻尾の出た妖狐の姿で。


この姿だと、他の人には見えない状態かな。