「ミコト?え?どうしたの?」




ボーッと外を見ていたミコトの瞳から、次から次へと涙が零れはじめる。
まるで蛇口をひねったかのような、意図せず流れてくるようなそんな涙。




「・・・わからない、わからないよ・・・。でも、なんだか溢れてくるんだ」

「ミコト・・・、泣かないで、ミコト」




零れ落ちる涙を慌てて拭いてあげる。
それでも、止まらない涙がぽろぽろと私の手を滑っていく。




「どうしたの?何か、思い出した?」

「・・・わからない、でも・・・。おれ、雪知ってる・・・知ってるよ」

「・・・そう」




ミコトの頬に添えた私の手を、ミコトが掴み、すりすりと頬ずりをする。
涙は止まらなくて、ミコトの頬を伝い、私の手を濡らしていく。

どうしちゃったの。




「あとね、おれの名前ね、ミコトっていうの」

「うん」

「大切って意味で、ミコト。とうといって書くんだ」

「とうとい・・・尊いって書いて、ミコトって読むのね」



少し、記憶が戻ったってことなのかしら。
尊・・・それが、ミコトの本当の名前。