「――――お前誰」




さっきの弾んだ声とは裏腹に、ズンと沈んだ声。
顔をあげて目に飛び込んできたのは、真っ白な髪。



武がこの間言っていた事を思い出した。


――白髪で長髪の美青年




亜子の親戚だという、それがこの目の前の人物なのだろうか。




「雨宮の会社の同僚で遊佐浩一といいます。雨宮が熱を出して倒れたので送ってきました」




見た感じでは年下のようにも見えるが、ひどく整った顔はそれさえ曖昧にさせる。
その男は、ムッと不機嫌そうな顔をしてズカズカと近づいてくると、浩一の背中に背負われた亜子の身体をグイッと引っ張り下ろした。



「っ、」

「亜子に触るな。お前の匂いは嫌いだ」





亜子を抱きしめ敵意丸出しのその男に、浩一は言葉を失う。
それはまるで、嫉妬のような。

親戚に対する感情では、ないような。
そんな違和感を感じた。




「明日は休めるようにしておくので、ゆっくり休むように伝えてください」

「・・・わかった」




それでも、浩一の言葉に素直にそう答えた男に、浩一は亜子を託すことにし部屋を後にした。