「あの、この部屋なのでもう大丈夫です」
「そうか」
立ってみると思いの外フラフラで、結局アパートの部屋の前まで送ってもらってしまった。
俺様な先輩が、今日はなんだかとってもしおらしく、責任を感じてしまっているんだろうなと思う。
「ほんと、悪かったな」
「いえ。こちらこそ、大事な接待だったのにすみません・・・」
「いや。大蔵さんにはちゃんとフォローしておくから安心しろ。見送った様子でも、気を悪くされている感じはなかった」
「そうですか」
そのことにホッとする。
私にとっては、セクハラおやじでも、会社にとっては大事な交渉相手だ。
私個人の感情でそれを台無しにはできないよね・・・。
「じゃあ、ちゃんと休めよ」
「はい。ありがとうございました。お疲れ様です」
遊佐先輩に頭を下げ、玄関のかぎを開ける。