「少し席が遠いね。隣に来て注いでくれないか?」
「え、あ・・・、はい」
言われるままに立ち上がろうとすると、すっかり酔いが回ったのか体がグラッと傾く。
それを慌てて立て直すと、悟られないよう隣に回った。
「大丈夫かい?すっかり酔ってしまったかな?」
「いえ、大丈夫です・・・。すみません。お注ぎしますね」
「ああ、ありがとう」
熱燗を手に、再びお猪口に注いでいく。
お猪口を持っていない大蔵様の手がすっと私の太ももに触れた。
「え・・・」
思わずそそぐ手を止めてしまう。
「ん?手が止まってるよ。ほら」
「は、はい・・・」
大倉さまは、何事もないかのように促すと嬉しそうににやりと笑った。
左手をそのままに、今度は熱燗を手にすると私の方に差し出してくる。
・・・どうしよう。
左手が気持ち悪くて、鳥肌が立つ。
でも、嫌だなんて言えない。
取引がダメになったら・・・。


