――だからさ、あいつの事嫌わないでやってよ




金田先輩に、そう言われたけど。
遊佐先輩が話しかけるのが珍しいって言ったって、まるっきりプライベートなことなのかといわれたらそうじゃない気もするし。
そもそも、遊佐先輩が私の事よく思っていないと思うし。




「取り合えず、仕事がんばらなきゃ」




私は人一倍努力してようやく人並みなんだ。
私は過去の資料が置いてある倉庫に居座り、片っ端から資料を読み漁っていく。
定時はすでに過ぎていて、家で待っているミコトを思うと可哀想だとは思うけど仕方ない。

ここの所ずっと帰りが遅いから、ミコトの機嫌がすこぶる悪いのだ。
仕事だからってちゃんと説明しているけど、妖狐であるミコトには人間のあれこれはうまく理解できないみたい。



でも、忙しくなったおかげで、ミコトの事から目を背けられている。
そのことには少しホッとしている。


だって、ミコトの気持ちをどう受け止めていいか、戸惑う方が大きいのだ。
ミコトの事は好き、可愛いとも思う。
でもそれが、恋愛感情かといわれたらよくわからない。


だって、そういう風に考えたことなんてなかったんだもの。