溺愛妖狐ひろいました




私は、なにも言えず立ちすくむ。
遊佐先輩は私を通り過ぎて帰っていってしまった。



どういう意味ですか?
その一言が言えない。



情けない自分。



自分がもっと強かったら。
秋穂みたいに行動が起こせたら。


こんな風に後悔したり、言いたいことが言えないままに終わったりすることなんてなかったのかな。




傘にあたる雨音が、私の存在事消してくれたらいいのに。




電車で一駅。
その距離に私が住んでるアパートがある。
駅から徒歩5分のなかなか便利な立地。

1DKのその部屋は、私が一番落ち着ける場所。




アパートの前までたどり着き自分の部屋を見上げる。
電気の消えた真っ暗な部屋。



金田先輩は、明かりのついた部屋に帰るんだろうか。




そんなこと考えたって意味がないのに。