「どうすればいいんだろう。彼女だけ残して幸せになんてなれないよ……」
彼女 “ だけ ” 残して?
……そんなの。
「それは違いますよ」
そう言葉を発したのは、咲希だった。
雅兄は不思議そうに咲希を見つめる。
なんとなく、咲希の言おうとしてることがわかる気がする。
だって俺も今、そう言おうと思ったところだったから。
「彼女だけなんかじゃありません。今でも雅也さんの中で生き続けてるんですから」
そう、キッパリと。
初対面の人に向かって言い放つ咲希が、すごく眩しく見えた。
俺には追いつけない。
それでも、その背中に近づきたい。
その体を、俺が抱きしめたい。
「もう進んでいいんです。今は無理でも、また立ち上がることはできませんか?」
まさに、俺の思ってることと同じだった。
今まで雅兄のことなんて何も知らなかった俺が言えないけど。
これでも血の繋がった兄弟なんだ。
雅兄には、幸せになってほしい。



