「ほら、もう泣かなくていいんだよ」
「う、ん……っ」
上手く笑えたかわかんないけど、笑わなきゃ。
武琉も背中を押してくれてるんだから、早く立ち上がらなきゃいけない。
たとえその手を引いてくれる人が尚じゃなかったとしても。
「じゃ、戻ろっか」
そう言って武琉は、リュックとラケットを持って進んでいく。
武琉、ありがとう。
少し前を歩く背中に向かって、心の中でそう呟いた。
この清々しい気持ちをかき消すように、新たな試練が私に待っているとも知らずに─────。
◇◆◇
その日は、梅雨の真っ只中。
空も私の気持ちと同じ曇り空で、この時期特有の雨が降ってくる。
尚と別れてちょうど1週間が経ち、私の心もだいぶ落ち着いてきた頃だった。
毎日のように武琉と凛ちゃんは私を心配して気遣いをしてくれる。
申し訳ない気持ちにはなったけど、そうしてもらえないと笑えないから助かってた。
桜蘭も苦しそうにする私を見て、話を聞いてくれた。
だからね、私は信じてたんだよ。
尚のことも心のどこかで、戻ってくるって信じてた。
桜蘭のことも……大事な友達だって、そう思ってたんだよ?



