舞衣はまるで最高級のホテルの一室に泊まっているようだ。

ベッドルームの先には、豪華な浴槽のついたバスルームとレストルームが続いて完備されている。
そして、舞衣の荷物はちゃんとこの部屋に置いてあった。
舞衣は一つ一つにため息をつきながら、会社に行くための身支度を整えた。

舞衣が部屋を出てリビングに行くと、そこにはミネラルウォーターのボトルを手に持った凪が座っている。


「ねえ、スマホ貸して」



「スマホですか?」



「そう、あ、開いてからちょうだい」


舞衣がスマホを凪に渡すと、凪は慣れた手つきで何か舞衣には分からない操作をしている。


「よし、これでOK。
一つ新しいアカを作っといたから。
メッセージ専用の簡単なアプリだけど、俺とうさ子しか開けないようにしてある。

ネームはうさ子と、俺はぎんなん。

じゃ、俺はもうひと眠りするからさ、いってらっしゃい」


舞衣は一言も話すことができないまま、凪はいなくなった。

うさ子とぎんなん……
銀杏??

舞衣は凪のぎんなんという発想に笑いが込み上げる。

ぎんなんって……

舞衣は会社に着くまで、可笑しくてずっと笑った。