「あゆ、そろそろ行くか？」

夜も更けてきた専務室で、俺は唐突に仕事の終わりを告げた。

「あ、待って下さい。あとこのデータだけまとめたら終わります」

手元の書類をチェックしながら、素早くパソコンに入力し、データをまとめあげていくあゆの姿を眺める。

普段陽だまりみたいな笑顔をしてるけど、この真剣に仕事をしてるときの顔もいいんだよな…。

何ていうか、ストイックな雰囲気がいつもと違う空気を作ってるっていうか…。

「どうかしましたか？専務」

妄想していたところを急に話かけられ、一瞬で現実に引き戻される。

「あ、お、終わったか？」

「はい！お待たせしてすみません」

仕事モードから一転、癒し全開の笑顔を俺に向けるあゆ。

「明日から連休だから、今日はそのまま俺ん家来る？」

帰り仕度をしつつ尋ねる俺に、あゆが首を横に振る。