なかなか納得いかない様子の拓海さん。

「そんな困った顔しないで下さい…無理ですよね」

やっぱり無茶なお願いだよね？忙しい拓海さんに連休取ってもらうなんて。

「忘れて下さい。拓海さんが忙しいのはわたしが一番わかってるのに、連休を取ってほしいなんてお願いして…すみません」

言ってしまった我儘に後悔が溢れてしまい、声が小さくなる。なんとか笑顔を作ろうとするけど、ああ、ヤバイな、わたし泣きそう…。

そんなわたしに、拓海さんが目を見開いて慌て始める。

「あゆ、何言ってるんだよ。あゆのために連休を取るのは構わない。ただ、あゆの誕生日なのに俺が休むことがプレゼントなんて。俺的に納得いかないっていうか」

優しく声をかけながら、わたしの頭を大きな手で撫でてくれる。

「理由、聞いてもいいか？」

わたしの目を真っ直ぐ見つめる瞳に、ああ、やっぱりこの人は優しいな、と思う。

「拓海さんがすごく、すごく頑張っているの知ってるから」

そう。会社の跡取りとして、仕事の日はもちろん、休みの日もゆっくり休むことなく、自分のスキルアップのため勉強をしたり、市場調査をしたり。

とにかく休みの日もスケジュールを組んで過ごすぐらい、忙しいのだ。

そのお陰で、専務は優秀だから会社を継いだとしてもうちは安泰だと誰もが認めてくれている。

「誰よりも努力している姿を知ってるんです。だから、わたしが予定もなにもない、本当に休める時間を拓海さんに与えてあげたいんです。甘えるだけじゃなくて、私にも甘えてほしいんです」