「行こう、三枝くん。ちゃんと家族と向き合わなくちゃだめだよ…!」


「…っ! ……嫌だ」


「…どうして?」


「嫌なもんは嫌なんだよ! 俺の過去を聞いただけで、分かったようなこと言うな!」


その目には、うっすらと涙が浮かんでいるように思えた。


自分が今何をするべきか、どうするべきか。


本当はきっともう分かっているんだよね。


あと少しの勇気が足りないだけ。


分かるよ、私も同じだから。


正直な思いを打ち明けることで嫌われてしまったらどうしようとか、今のこの関係が崩れてしまったらどうしようとか。


不安も心配も、緊張という形になって心も体も支配する。


もやもやして、なんだか苦しくて。


いつもどこかで引っかかっている。


絶対に逃げられない鎖のように。


だからこそ、その鎖を引きちぎれるような固い覚悟が必要なんだ。