学校を抜け出して、いつもの電車に揺られる私たち。


ふと隣を見れば、私より背の高い三枝くんがいる。


数日前までは、制服の胸ポケットの中で眠っていたのに。


「ん? どうした、鳴海」


何かついてるか、と顔をひたすら触っている彼。


そんな子供らしい姿は、私の知っている三枝くんと変わらず、なんだか微笑ましい。


「不思議だな、と思って」


「…は?」


三枝くんは、手を膝の上に下ろした。


「ついこの間まで、こんなに小さかったんだよ? 三枝くんは」


指でつまむような仕草を見せると、彼は恥ずかしそうに顔を赤らめる。


「一寸成就のことはもう忘れろ…! 体が3センチしかなかったなんて、ダサくて思い出したくもない」


「なんで? 可愛かったよ」


体が小さいっていうだけで、一つ一つの動作が小動物のように見えて、ペットを飼っているみたいだった。


ただでさえ沸騰しているのに、こんなことを言ってしまったら、三枝くんは温度が上がりすぎて倒れてしまいそうだ。