「あ、出来た」


小さな喜びを笑みに添え、はい、と携帯電話を返してくれた。


『かすみ♡』


アドレス帳を開けば、そのような名前が追加されていた。


突っ込みどころがたくさんあり、携帯の画面から鈴村さんにまた目線を向ける。


「こ、これは一体…」


私が尋ねると、にっこりと微笑む鈴村さん。


「この方が親しみやすいかと思って!」


すると、逢坂くんも画面を覗き込んでは笑い声をあげた。


「ははっ、『かすみ♡』って…ふっ…」


「う、うるさいなぁ! 小春くんには関係ないでしょ!」


もう、と怒りながらも本当は楽しそうに見える。


ある時には親友のようで、またある時には恋人のようにも見える。


友だち以上恋人未満、とはこのことを言うのかもしれない。


2人の姿を微笑ましく眺めながら、私も穏やかに笑っていた。