ー10年後ー
「恵先生ー!」
「蘭ちゃん」
元気に走り、私の所まで来た
小さな女の子はその手に小さな花を持ち、
私にそれを渡してきた
「これ恵先生にあげるっ」
「え?」
「今日でもう退院だから…」
「蘭ちゃん…大丈夫、きっとまたどこかで
会えるから」
「本当?」
「えぇ」
そう言うと蘭ちゃんは笑顔になり
玄関にいたお母さんの所まで
入っていった
最後に私の方に手を振りながら帰って行った
あれから私は、医師になることを決めた
もう私のように大切な誰かを
なくした人を見たくないから
皐月のように、大切な人を手放すなんて
馬鹿な真似はしないでほしいから…
ねぇ皐月…あれからもう10年がたったよ?
貴方はもう…生まれ変わっているのかな…
今は…誰か大切な人と…
暮らしているのかな…
ダメだなぁ私…こんなに涙もろくなるなんて
皐月のせいなんだから…
『恵』
「え?」

