紅葉で赤に染まった展望台は、昼でも少し肌寒い。

足下に散らばる砂利と紅葉を、転ばない様にゆっくりと踏みしめた。

「ふー。気持ちいい」

山独特のなんとも言えない香りが、鼻孔をくすぐる。


望遠鏡に近づくと、肉眼でも街が一望出来た。

(嗚呼、そうだ……)

住んでいる街が一望出来るこの展望台が、私は昔から好きだった。


「ここ、私の大好きな場所です」

「そうだと思ってた」

(あれ……? そう言えば……)

「どうして出会ったばかりの明彦さんが、私の好きな場所を知っているんですか? 」

サァァァと優しい風が、木々の紅葉をさらってゆく。

紅葉が舞い散る中、明彦さんは涼し気な表情で「さぁな」と笑った。


その姿があまりにも神秘的で、思わずドキリとしてしまう。