結局私は、男と共にあの家に帰ることになった。



木村先生の言っていた、『あなたの心を癒すきっかけが、アキくんにあるのだからね』と言う言葉も気になったから……。

病院の駐車場に止めてあった男の車に乗り込み、家に向かう。

車の時計は、午後の6時を表示していた。


「あの、……」

助手席から流れる景色を見つめながら、私は男に尋ねる。

「あの、貴方は会社に行ったはずじゃ……? 」

そう、病室に飛び込んで来た時からずっと気になっていた。

彼の、スーツ姿が。


男は運転しながら、「あぁ、」と首を縦に動かす。



「仕事に行ってたよ。さっきまで。でも、ハルが倒れたという連絡が入って、急いで出てきたんだ」


そうだ、彼は今朝の玄関先で、7時に家に帰ると言っていた。

今はまだ、6時前……。

つまり彼は、仕事を途中で辞めて倒れた私に会いに来たのだ。