「どうして、私はこんな所にいるの……? お願い、家に帰らせて! 」暗闇の中そう叫ぶが、男はただ首を横に振るだけだった。「それは出来ない」「どうして……? ……まさか、貴方が私をここに連れ込んだの……? 」男はそれを聞き、フッと笑った。「そうかもしれないな」否定をしないということは、肯定しているのと同じだ。ということはつまり、この男は私を誘拐したんだ……!突然、男が私の口元に手を当てる。「んむっ!」口の中に、何か小さな塊が転がり込んできた。いきなりのことで対処仕切れず、口に入り混んだ小さな塊を吐き出すどころか、ゴクリと飲み込んでしまった。体が、ワナワナと震える。「な、なに……? 貴方一体、何を飲ませたの……? 」男は黙ったままだ。嗚呼、早く、ここから、出なくちゃ……。そう思うのに、足がもつれて言うことを聞かない。視界がユラユラと揺れてきた。まさか……「睡眠薬を、飲まし、たの……? 」揺れる視界で捉えた男の顔は、無表情だった。意識が徐々に遠くなっていく……。体が、バタンッ!と床に崩れ落ちた。男が近づいて、耳元で囁いてくる。「おやすみ、ハル」それを聞き終え、私は……意識を手放した。