1階を調べた結果、窓は特別な南京錠で、硬く施錠されていることが分かった。

南京錠の鍵は恐らくアキと言う男が持っているはずだから、窓からの脱出は不可能……。

そう実感し、絶望が心に沸き起こり始める。


この家は完全なる密室なのだ。

逃げる術はない。

ただ1つ、あるとすれば……

「玄関扉の、オートロックのパスワードを解くこと……」


か細いその呟きは、誰もいない廊下へと吸い込まれていった。

誰もいない不安から、より恐怖が掻き立てられている。そんな気さえする。


そもそもここに誘拐される前に私は、何をしていたの?何処にいたの?


目を覚ました時には既に、パジャマ姿だった。

あの男が着替えさせた?...やめよう。余計なことを考えるのはよそう。

今は、ここから脱出する方法を見つけなくちゃ。

それと、1階を調べてみて分かったことがもう1つある。


それは、この家にはあの男以外に誰か住んでいる、もしくは住んでいたということ。


食器棚には2人分のマグカップや茶碗が並べてあるし、洗 面所には歯ブラシが2本置いてある。



……しかも、女性用の。


これで益々、あの男のことが恐ろしくなってきた。

ここにはかつて、あの男が妻と共に住んでいたのではないだろうか……?

彼の容姿からして、娘や子供がいるような歳には見えない。

私と同じ歳くらいに見えた。


もしかして2階の、南京錠のついたあの部屋……