床に舞い落ちた花びらを凝視する。


今、確かに……人間みたいな手の、感触が……。

ハルが慌ててベランダの窓を閉めた。

「換気しようと思って、さっき窓開けたの忘れてた。今日は結構、風が強いんだね」

彼女も床に広がった花びらを残念そうに見つめる。

「あーあ。花が散っちゃったね。……アキ? どうかしたの? 」

「え? いや、別に」


不思議な出来事から現実世界に引き戻された俺は、慌てて立ち上がった。

「さ、それじゃ2年も放置されてたハルの部屋の掃除にでも取りかかりますか」

彼女は驚愕の表情を浮かべる。

「そ、掃除してなかったんだ……。それは気合い入れていかないと駄目ですね……」

2人で掃除道具を抱えながら、足並み揃えて階段を上がる。