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「ありがとうございます」
よく見ないとわからないくらいの微笑みをつくった睦月さんは、私からポットを受け取った。
なんというか、いつ見てもこの人は笑うのが下手だ。
(笑うのが下手っていうか……)
(愛想笑いが下手なのかも)
初めてここへ来た日に笑ってくれて以来、ちゃんとした笑顔はまだ見たことがない。
でもあの時の笑顔は幼くて、ものすごく可愛かった。
「? いつきさん? どうしましたか」
「………へ、あ? あ! 申し訳ありません」
睦月さんへ渡したままの姿勢で―――ポットから手を離さずにいたことに気付き、慌てて離れる。
表情は相変わらずわかりにくいけど、不思議そうに見られていたことはわかった。
重さのあるポットを抱えるようにした睦月さんは満足そうに唇を緩ませる。

