「電話って…」


「姫野さんの体調のこと聞いてたんだ。電話番号は姫野さんの担任から聞いた」
と黒川くん。


担任から聞いたって…。


どうして黒川くんは…ここまで私のことを気遣ってくれるの?


第一、校内1のヤンキーと騒がれている彼が、今私の家の玄関に立ってることがとても現実とは思えない。


私は、黒川くんを見て固まってしまう。


「あ!お兄ちゃんが起きたら色々うるさくなると思うから、2人とも、早く学校いきなさい!」


「…えっ…ちょっ」



お母さんは思い出したように慌ててそう言うと、私と黒川くんのことを玄関から追い出すように、2人の背中を少し強引に押した。



もう…何がなんだかさっぱりわかんないよ。



いきなり、不良少年の隣を歩いて登校する形に
私はまた熱が出そうなくらい頭でグルグル黒川くんの言動の意味を考える。


全然わかんない。


わかんないよ…。



「く、黒川くん…」


「んー?」


「…な、なんでこんなに良くしてくれるの?」


こんな私に優しくしたっていいことなんてないし。

からかってるつもりなら、私は面白い反応ができるような子でもない。



それなのに…一体何が目的なんだろう。



黒川くんは少し考えてから、口を開いた。




「姫野さんのこと、好きだから」