一瞬しんみりしてしまった。


「おいおい、何を今更改まってるんだよ?」


「ふふ……」
 

俺が尋ねても、咲雪は意味ありげに笑ったまま答えてはくれない。



「あの、もうそろそろ行かないと……」
 

茉優ちゃんに言われて俺はハッと我に返った。
恐る恐る時計を見る。



「ヤバイ!遅れるぞ。急がないと!」


「うわっほんとだ‼」

 

俺たちは慌てて立ち上がった。



「じゃ、咲雪、しばらく一人で大丈夫か?」
 

悠聖が尋ねると、顔を不安そうに歪める咲雪。



「いや……。お願い、一人にしないで」
 

震える声でそう言って、咲雪はだだをこねる。


咲雪がこんな態度を取るのは滅多にないことで、驚いてしまった。



「今日に限ってどうしたんだよ?午前中だけで戻って来るんだよ?」

 
俺がそう言っても、咲雪は頑なに一人は嫌だと言い続けた。