近所の診療所の待合室はいつも通り混んでいる。


あたしが待ち疲れた頃、小柄な女性看護師が診察室から待合室にでてきた。




「緒方サクユキさん、おられますかぁ?」



は?

あたしとお母さんは思わず顔を見合わせた。



“何今の?”

“さあ?”

“間違い?”



あたしたちの思惑をよそに彼女の呼び掛けは続く。



「緒方サクユキさーん、順番ですよぉ?」



いや、確かにそうも読めるけど……


あたしは遠慮がちに彼女に声をかけた。



「あ、あの……あたしはサクユキじゃなくてサユキなんですけど……」



彼女は一瞬唖然として、ついでクスクスと笑い出した。



「ご、ごめんなさい。緒方さ、さゆきさんね。フリガナを書いてくれると助かるのだけど。

順番よ。診察室にどうぞ」



あたしもつられて笑ってしまった。


お母さんを見ると、お腹を抱えて悶絶している。