莉菜は俺の婚約者だった。

親が決めたことだから逆らう気もなかったし、逆らう気力もなかった。
適当に話し相手になればいい、そう思っていた。

初めて莉菜をみたとき、腕にアザがたくさんできていた。

俺をみても驚かず、優しく笑うだけ。

「蓮さんですか...?」

綺麗な落ち着いた声だった。
俺は頷き、莉菜の隣に座った。

右足についた足枷がこの家の異常さを物語っていた。

「いくら隠し子だからってやりすぎだろ。」

多分、この傷は莉菜の義母、綾都の母親がやったがもの。