「チア部終わったの?」

「終わったよ! 今日はこれからの活動の話し合いだけだもん」

「そっか」微笑んでうなずき、靴をはきかえるえれなを待った。

同じチア部の子たちが、次々に現れてえれなに声をかける。

「えれな、もう帰るの? せっかくだから、カラオケ行こうよ」

「振り付けの確認もしたいしさ、えれながいないと」

わたしはそっとその場を離れて、外に出た。

ガラス張りのドア越しに、チア部の仲間に囲まれているえれなを見る。

えれなは幼稚園の時からの幼なじみだ。
家も近所で中学校も高校もずっと一緒で、一緒にいるのが当たり前の存在だけれど、でも、タイプは全然違う。

例えていうなら、えれなは明るく輝く太陽だ。

もともと可愛くて評判の女の子だったけれど、中学生になった頃から、どんどんあか抜けて、きれいに、女らしくなっていった。もともと明るい性格で積極的なえれなは、いるだけでぱっとその場を華やげる存在だ。

中学三年のときには他校にファンクラブまでできたほどで、この高校に入学することが決まったときは、入学手続きのときに先輩の男子生徒たちがわざわざ様子を見に来ていたなんていう伝説もある。

チア部に入部してからは、その華やかさに一段と磨きがかかった。

背が高いわけじゃないけど、手足が長くて、目鼻立ちのはっきりしているえれなはパフォーマンス中もひと際目立った。一年生の夏にはレギュラーメンバーになり、二年生のいまは部長になって名実ともにチア部の顔だ。

みんなに囲まれているえれながこっちを見た。

『先に帰るね』とわたしは声に出さず、口パクとジェスチャーで伝えた。

えれなが驚いて『えー?』という顔をするのを、『気にしないで、バイバイ』とまたも口パクで手を振ってわたしは歩き出した。