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インターホンが鳴ったのに、倫子はモニターをのぞいた。


この純和風の平屋の中で、最新の機器の一つだ。


“だって、これじゃないと倫子さん、狙われるでしょう?”


時々、王子の言うことは理解できないが、自分のためらしいということに、倫子は照れた。


そんな扱いを、これまでの人生にされてこなかったから。


モニターに映っているのは、一度だけ会ったことのある宗忠の同僚だ。


「はい」

「はよ~」


なんか軽い挨拶だなあ。


その挨拶の向こうに、うなるようなエンジン音が聞こえてきた。


窓に視線を移すと、チェーンで雪を蹴散らかして、黒い塊がもう突進してくる。