「ってか、車、下げろよ。
 出られないだろ」

「なに、下手くそだねえ。
 あれで出せないの?」

「出せるかよっ」


私も出せないと思う。


倫子はやや菊池が気の毒になった。


「しょうがないなあ。
 まあ、ゆっくり行ってきてね。
 帰ってこなくてもいいから。
 あ、でも、緊急の電話が入ったら、迅速に対応してね」

「お前、本当に悪魔だな」

「ええー、そんなことないよ。
 この間、診た女の子には天使みたいって言われたよ」

「堕天使の間違いだろ」


うん。


倫子も思わず胸の中でうなずく。