「あなたの歌とても素晴らしいわ」
『ありがとうございます?』
「疑問形なのね」
くすくすその綺麗な顔で
笑う見知らぬ女性
こんなに綺麗な人だからきっと
モデルさんか女優さんなのかな
歌番組の収録でスタジオに来ていた
私はトイレでその人に初めて会った
すらっとした手足
小さな顔
豊かな胸
さらさらと流れる髪
女性らしいいい香り
こんな人がこの業界にはあふれている
私なんか歌しかとりえのない
特別可愛いわけでもないし
綺麗でもない
そんな私なんかにきっと
大翔は振り向いてくれない
綺麗な人に会うたびにそんなことが
頭をよぎった
小さい頃からずっと一緒だった
当り前のように隣にいて
誰よりも一緒の時間を過ごしてきた
私の辛かった時も
楽しかった時も
悲しかった時も
嬉しかった時も
全部大翔が隣にいてくれた