「はぁ……」 2週間安静じゃ、ピアノも弾けそうにないなぁ……。 現実逃避できる、唯一の手段も無くなって……私はどうしたらいいの? そんなことを考えながら、教室までの道のりを歩いていると……。 「おい、今じゃね!」 「よし、せーのっ」 ――ドンッ!! 「きゃっ……」 強く、背中を押された。 そして、私の体は前へと傾く。 ……嘘っ、今また転んだりしたらっ。 とっさに痛めた左手を庇うように胸に抱え込み、ギュッと目をつぶった。