「記憶を失おうが、北園さんは北園さんっしょ?だから、そのクマはずっと大切にしてきた梓のものだと思うけどね」 「……何言ってるの、この子は返すよ」 まるで自分に言い聞かせるようにそう言って、私は楽譜をまとめる。 すると、音楽室の入り口へと向かった。 「ふぅーん、梓がそう言うならいいけどね」 「何か言いたそうだね、八雲」 「べっつにー?」 絶対に嘘だ。 どうせ、本当は誰にも渡したくないくせにって言いたいんだろう。 八雲は、私の本心なんて簡単に見抜くから。