「なんだあ、立樹。もしかして、お前が描いたのか? これ、おもしれーな!」



ノートを持っている、体の大きな男子が口を開くと、周りの男子もまた騒ぎ出した。


彼の言う『おもしろい』は、明らかに褒め言葉ではない。


馬鹿にしているのだ。



ーーその瞬間。



「返せっ!」




……彼が。あの立樹くんが、身体の大きな男子に強烈な体当たりをしていた。


誰もが、目を疑った。

もちろん、私も。

体当たりされた男子も。


不意をつかれた彼は、あお向けにひっくり返った。


勢い余った立樹くんもそれに覆いかぶさり、ノートにしがみつく。


「なにすんだ……よっ!」




大柄の男子は、仰向けのまま立樹くんを思い切り殴った。



ごん、と鈍い音がする。


彼のかけていた眼鏡が宙を舞い、カシャンと音を立てて落ちた。




私は、思わず目を覆いたくなった。


しかし、私が目を背けちゃいけない気がした。


殴られても、彼の細い腕はノートから離れていなかった。



「かえ……せぇっ!」



また、叫ぶ。


叫びながら、殴られながら、彼はノートにしがみついている。



でも、体格差がありすぎる。このままでは危ない。