「押し倒されんのお前だから」


ヤヨの低い声が耳元で聞こえたら、


グルン。天地反転。


ヤヨの力強いけど優しい手。


華麗に押し倒されたあたしは、ヤヨを見上げてる。



「ち……近いね。ヤヨちゃ」


「お前なんなの?」


ヤヨは眉間にしわを寄せて、あたしを見つめる。




「何なのって……なんなの?」



そんな返ししかできないくらい、ヤヨの表情が色っぽい。やばい。



「はぁ……。俺、男なんだけど。わかってる?」




落ち着いたヤヨの声。目、あたしから逸れない。


「あんまり人のことナメんな」



顔が近づいたって思ったら

キスされて1回、2回。


角度、また変えた。



もう、やばい。心臓が破裂する。


し!舌?



「あ……ヤヨ、待」


「黙って」



なにこれ、なんでこんなにドキドキいうの?



唇奪われたまま。舌すら、ヤヨが。



息が、吸い方も、わかんない!



クリスマスイブ!死にたくない!


死ぬのだけは、


「や、だっ、」


って、両手でヤヨのこと、思いっきり跳ね飛ばした。


恥ずかしすぎて、渾身の力でちゃったかも。ヤヨ、一発で離れた。



「「……」」



ドキドキ、ドキドキ、速さが変わらない。



あたし、ヤヨから3歩くらい、座ったままの後ずさり。



「だ、ダーツに、行こう?」



メイクでパウダーしてても、多分バレてる。あたしの赤面。



「赤いのどっちだよ」



ヤヨは呆れたように、離れたあたしの手をとって、立ち上がらせた。



余裕っぽいその仕草も、あたしの心臓にはキツイ。



「あ。ここ防犯カメラあったかも」


「嘘でしょ?!」


「嘘だよバカ」