ヤヨの落とした紙切れ拾ったら、見えちゃった。
可愛い丸文字。
……女の子の文字じゃん。



「なにこれ?」


じろり、ヤヨをにらむ。
ほっぺはぷくぅと膨らませた。


「あ……」



なにが”あ”なの。

このうわきもの。


「≪おいしいって言ってくれてうれしかったよー”ハアト”≫」


はあと、まで、そのメモを読み上げた。


しっかり言い訳してね?ヤヨちゃん。



「調理実習で作ったとかってやつもらって、美味しかったか聞かれたから」


「調理実習?年下?」


「いや、3年の普通科」


あたしと同じ3年の普通科ですか。


調理実習なんかないんですけど。
受験生なんですけど。
それ絶対、ただの手作りだから。


なんで食べるかなぁ。


そんな下心丸見えの子に、なんで手紙もらうかなぁ。


もっと言えば、なんでその手紙を大事にポケットにいれてるかなぁ。



「その子可愛い?」


芙祐の方が可愛いよハァトって言ってくれたら水に流すよ。


あたし優しい彼女だからね。


「おぼえてない」


……んー、ギリ、アウト?
いや、セーフ?


首をかしげて判定に悩んでいたら、


「行くぞ」


って、手を引かれる。
その横顔はあきれ顔。


あたしね、その「お前ってどうしようもないやつ」みたいな。


ヤヨのあきれ顔、結構好きだよ。


「うん、行く」



あたしは、ヤヨにだけ、特別。
ちょろいんだよ。実は。