「声でかいし、まじでやめろ」


ぽん、と、あたしの頭にヤヨの手が乗った。


「やーだ」


あたしは手をつかんで、そのままぎゅって握るのに、
ヤヨはいつのまにか離しちゃう。



付き合いたてみたいに《手つないで赤面!》みたいなヤヨももういないし。


最初はね、それはもう赤面くんだったんだよ。



……それでもあたし、めげないよ。


だって、超好きだからね。ヤヨのこと。



「さっきまで数学してたの?」


「うん。次のテストの範囲が広すぎるから、やばいかも」


理数科の帝王、
数学マニアのヤヨちゃんが、弱音なんて。

……珍しい。


「今日遊ぶのやめとく?」


「いや、約束は約束だろ」


律儀。
すき。


「じゃあヤヨの家で勉強しよっか」

「どうせ芙祐は雑誌読んでるだけだろ」

「勉強しますー」

「いいなぁ……余裕のA判定で」


ヤヨとは目指すムチャ度が違うからね。


あたしは私立の看護科一択だし。3教科だし。


ヤヨは国立。
しかも超偏差値高い大学の理工学部狙い。
滑り止めも有名な私立の理工学部。


「そんな落ち込まないの」


背伸びして、頭よしよししてあげた。


「やめろ。人いるだろ」


照れ屋さん。


「あれ、ヤヨなんか落としたよ」


「お前落とすとか落ちるとか言いすぎだから、さっきから」


あ、細かいこと言いだした。
ヤヨはA型。たぶんAAのA。