「芙祐ってつぎの実習いつ?」


「ヤヨちゃん、今その話はしないの。現実に帰ってから話そうね」


「あ、そ、ごめん」


芙祐の大学は、かなりハードそうだ。
そりゃそうか、人の命救う仕事
目指してるんだもんな。



「芙祐はすごいよな」


純粋に尊敬する。


高1のときにはもう看護科に行くって言ってたけど。


「なんで看護師になりたいの?」

「ヤヨちゃん、あたしの話聞いてた?」

今その話はしない、って
念を押された。

どんだけ大学きついんだよ。


「ヤヨは何になるの?」


「えー、俺?」


「あの大学で理系なら引く手数多だと思うけど、ヤヨは夢ってあるの?」


高1の段階で夢があって
それを追ってる彼女から
その質問されると……。


……自分が情けない。



「芙祐みたいにしっかりした夢はないよ。そろそろ決めたいけど……」


先輩たちの入社先は幅広くて、
だからこそ絞りにくい。
それに、なりたいものが思い浮かばないんだよ。


「いいじゃん、そんなに焦らなくても」


「でも大学2年になったからなぁ。まわりはみんな結構考えてる」


「ヤヨ、院に行くんでしょ?まだ余裕あるんだから焦って決めることないよ」



「ぜんっぜん問題ないよー」って
ひとごとみたいなその笑顔が、
俺の気持ちを楽にさせるって
芙祐は気づかないだろうな。



思わず吹き出した。


こういうなんてことない時に
芙祐が彼女でよかったって
思うんだよね、俺は。



「じゃあ、特別にあたしの志望理由を教えてあげようか」


まわりの友達には言ったことないし
言えないような理由だよ?って、

いたずらっぽい笑みを浮かべながら
トンネルに入る。