【完】もっとちょうだい。

『このへんは重要で、試験に出します』

教授のマイクから響く声に
一斉に紙にペンを走らせる音が響く。


あたし、
眉根を寄せながらヤヨを見た。
ヤヨ、気付いてない。

ヤヨはレジュメに、板書を少しずつ書き足してる。


レジュメを覗き込むと、
”地球と宇宙の科学2”だって。

何この授業。

「壮大な授業だね」

「何習ってんのかわかんないけどな」

「単位大丈夫なの?」

「余裕」

ヤヨ、去年フル単だったもんね。
フル単て単位落とさなかったって意味。

……ヤヨ、授業聞き入ってる。
結局、真面目なとこかわんない。
よかったけどね。
不真面目なヤヨって、なんかやだし。


「ねぇねぇ、芙祐ちゃん」

あたしとヤヨのすわる長机の
前の列に座ってるハルキくん。


こっちを振り返って、あたしを呼んだ。
にっこにこで。


「なに?」

首をかしげると

「今度俺と飲みにいかない?おごるよ!」

「え?」

「飲み嫌なら、ご飯だけでもいいよ!」

「ちゃらい。ねぇヤヨ、こんなチャラいひとと友達なの?」

「ひど!」

ってハルキくん笑ってる。

「ハルキは前代未聞に軽いから。気にしなくていい」

ヤヨは真顔でそう答える。
ハルキくん、いたずらっぽく笑って……。

ボケと突っ込み的な……
うーんと、無し寄りの有り?

こんなちゃらいひととヤヨが友達なんて、
意外過ぎるんだけど。

「てか彼女連れてるけど、弥生今日花見の予定あけてるよな?」

ハルキくんが突然深刻なテンションで言う。

「花見?」

「新歓の!今日だよ」

「あーバイトだわ」

「おま……。お前居なきゃ可愛いマネージャーはいってくれないだろーが……」

なんか言い争いしてる。

「新歓って、サークルの?」

あたし、割り込んで聞いてみた。

「そうそう。サークル。1年の勧誘のために今日花見に行くんだよね」

「お花見?サッカーなのに?」


あ、ちがった。
フットサルだっけ。


「フットサル見せてもたくさんは入ってくれないから。花見って言っても花見公園でシートしいて飲むだけだけど、結構この花見で一年、サークル決めてくれるから大事なんだよ」

ってあたしに説明してくれたところでハルキくん、ヤヨに詰め寄る。


「……弥生はこんな可愛い彼女いるんだから、俺らサークル仲間のためにも可愛い女子入れてくれてもいいだろ!」

「それは自分らの力でやれよ……俺バイトだって」

「お前立ってるだけでいいから!」


なにこの複雑すぎる会話……。
ヤヨは要するに
客寄せパンダなの?

……なんかやだ。
すっごい嫌。

だってあたしだったら
ヤヨ目当てにサークル入っちゃうかもって
思っちゃうくらい、
ヤヨかっこいいもん。