慶太くんのいる空き教室まで
ほとんど走ってる。


慶太くんが勉強してる背中を
窓越しから確認して
そっとドアをあけた。


イヤホンつけてるから、
全然あたしに気付いてない。


声を出そうかなと思った時
慶太くん、エスパーみたいに
あたしの方に振り向いた。

「あれ?どうした?」

って
慶太くんは
両耳からイヤホンを引っこ抜く。


「やっぱすごい……」

嬉しいのか懐かしいのか
わからないけど、笑みが浮かんだ。


そんなあたしを
不思議そうに見て、

かたんと椅子から立ち上がる慶太くん。


ドキドキとなる心臓。
緊張とそれ以外が
きっと混ざってる。


「もしかして弥生くんいなかった?」

首を横に振ると。
慶太くんは、そっかって言って、
柔らかい表情で
あたしの言葉を待っててくれてる。


「慶太くんに用事があるの」


あ、今
頭の中ハテナでいっぱいだ。きっと。