「なんで俺が、元カノと、その元カノを奪った男との仲を取り持つようなこと、すると思う?」


芙祐ちゃんは考え込んでから、ゆっくりと首を傾げた。

……わかんないか。

俺は一つ呼吸を置いて、涙目の芙祐ちゃんに微笑んで。


「……大好きだからだよ、芙祐ちゃん。好きな子を一番守ってあげたいって思うのは仕方ないでしょ」


芙祐ちゃんは、目を丸くして、そして俺から逸らした。


その横顔は、赤くて。
ちょっとくらいどきどきしてくれてんのかなって、
こんな時に思っちゃったりしてね。


「え、えっと……」

「返事とか何も求めてないよ。芙祐ちゃんが弥生くんのことを大好きなのはわかってる」


知っていてほしいだけ。


弥生くんには足元にも及ばないかもしれないけど、
それでも、芙祐ちゃんには俺がいるってこと。


「……何回でも助けてあげるよ。だから、行っておいで」


俺に背中を押されるままに、

芙祐ちゃんは教室から出て行った。