SIDE弥生


***


理数科の教室は、受験前の張りつめた空気でほとんど凍っている。



それが一瞬止む放課後、


「やーよーちゃん」


って、芙祐が教室のドアのところで大きく手を振ってくる。



反射的に「静かにしろ!!」ってジェスチャーをしてしまう。





ふわっふわのマフラーをまいて……。

大きな目は俺から絶対そらさない。きゅっと上がった口角に……それから。




なんでもいい……かわいい。



「弥生の彼女見るのが俺の癒しだわ……」


ぼけーっと、傍の男子が芙祐を見ているから、



「あんま見んな」


俺は慌てて芙祐のところに行く。


芙祐の隣に立った瞬間、


ぎゅっと、腕をつかまれて、



「早く会いたかったぁ」



って、上目遣い。



……なんでお前そんなに可愛いの?


理解できない……。