放課後まで、ヤヨから、一通の着信もLINEもなかった。

あたしは何度も文を打っては消して、結局送信できなかった。



放課後自習してる生徒が半分くらい残ってる静かな教室を出た。
溜息ばっかり出て、何一つ集中できないから。


廊下の片隅で窓の外をぼうっとみていたら。


とんとんと肩を叩かれて、どきっとして振り向いた。


……慶太くん。


「今がっかりしたでしょ」

「そんなことない」

「うそつき。朝はありがとう」


「ううん。でもななちゃんと何があったの?」


「告られたから振ったんだけど、振り方が良くなかったのかなぁー、一応反省する」


そんなことであの騒ぎに……?


「そのあと弥生くんとは?」

その質問に
あたしは首を横に振る。

慶太くんは心配げな顔をして息を吐いた。

「……勉強、全然手につかないの」

「弥生くんとゆっくり話すしかないと思うよ。俺のせいでまたひとつこじれたし……本当ごめん」

「慶太くんのせいじゃない。全然。これだけ拗れるって、やっぱりそういう相性なんだと思う」

「まぁ……今のところ、タイミングとか。正直最悪だよね」


慶太くんも苦笑い。
あたしもそう思う。


「ヤヨと今話してもね……何を話せばいいのかわかんなくて」


ヤヨを責める?

この前のことを謝る?

ヤヨの本当の気持ちを教えてもらう?

付き合い続ける?

それとも別れる?


……あたし、多分どれも求めてない。


「極論を言えば、三択じゃないの?」

「なになに?」

あたしは慶太くんを見上げた。


慶太くんは指を折りながら、ゆっくりと言う。


「付き合う、別れる、一旦距離を置く」


「……距離を置く……」


小さな溜息と一緒にこぼれた言葉。


「でも距離を置くと半分以上別れると思っておいた方がいいよ。あんまりいいことない」


「そっか……そうなんだ。わかった。気をつける」