結局、その後一言も口をきかないまま週末になってしまった。 当然、今朝は部屋のチャイムも鳴らない。 ちょうど親に呼び出されていたので、電車で三時間の距離の実家に帰省した。 「ただいまー」 あぁ、懐かしい匂いだ。 玄関を開けて、まずそう思った。 夏の、うちの匂いだ。 母親のおかえりー、の声と同時に何かが転がるようにしてこちらへ走ってきた。 三年前から実家で飼っているミニチュアダックフントの『ロン』だ。 アン!と一声あげたのは、俺に挨拶しているつもりらしい。