姫は自由に生きている


母親は、仕事のない日は彼氏らしき男を家に連れてくる。


「あんた部屋から絶対出てくるんじゃないわよ。いいわね。」


母親の彼氏が来る日は、必ず部屋から出してもらえない。


薄い壁一枚で仕切られているこの家は、どこに居たって大きな声で喋れば家中に響く。


今だって


「ぁ…アツヒコさんっ……」


母親の…女の喘ぎ声が俺の耳に届く。


俺はそんな声聞きたくなくて、耳を塞いで蹲って強制的に寝るようにしてる。


朝になって起きれば母親は一人で寝ていて、俺は一人で支度して学校へ行く。


そんな生活して、気づけば中学生。


母親は一度も俺の入学式も卒業式も来なかった。


別にいい。

もうこの人に期待なんてしてないから。


そんな俺の人生を変えたのは、中2の夏。


帰宅部の俺はいつものように学校が終わって家に帰る。


「あれ?母さん?」


いつもこの時間はリビングで出勤の支度してるはずなのに、母さんの姿が見えない。


アフターだったのかな?


なんて気にしてなかったが、テーブルの上に置き手紙があった。


『しばらく困らない程度の金は置いておくから一人で生きていきなさい。さようなら。母より』


「な、んだよそれ……」


どうやら俺はついに捨てられたらしい。


置き手紙と一緒に置かれていた通帳を手に取れば、


「こんな金……」


通帳には1000万は超える金が入っていた。


「は、はは、あははははは」


馬鹿らしい。母より、だって。今まで母親らしいことした事ねえくせに。なにが母よりだ。


「ふざけんな…ふざけんなよっ」


おかしい。怒ってるはずなのに、勝手に涙が出てくる。


「なんでっなんで捨てるんだよっ…」


俺と目を合わせなくていいから、喋ってくれなくていいから、せめて、せめて側にだけは居て欲しかった。