姫は自由に生きている




これは、愛に飢えた男の話。



物心ついた時には、既に父親は居なかった。


居るのは常に厚化粧をして露出の多い服に身を包み、香水と化粧品の臭いをチラつかせるケバい女。


その女は俺を産んだ親であって。つまりは母親。


「金置いとくから勝手に食べて寝なさい」


じゃ、いってくるから


そう言って母親は夕方になるとどこかへ出掛ける。


夜中に帰って来て昼間は寝ている。


「いってらっしゃいお母さん」


「……………」


俺には言いたいことを言って、俺が返事をすれば無視する。


カツカツとヒールを鳴らして家を出ていった母親。


俺はテキトーにコンビニに行き夜ご飯と朝ごはんを買って家に戻る。


思えば、母親に愛してもらった事など一度もない。


小学生になって知った事と言えば、俺はどうやら母親の別れた男、つまり俺の父親似らしく
「あの男にそっくりでホント気持ち悪い」そういう理由で俺は母親に嫌われているらしい。


今となってはどうでもいいが、あの頃の俺は深く傷ついた。


「お母さん、今度授業参観に……」


「は?話しかけないでくれる。気持ち悪い」



歳を重ねれば重ねるほど、母親の俺に対する当たりは強くなっていく。


小学3年生になり、俺は母親の職業を知った。


「お前の母ちゃん、水商売やってるんだろ?俺の母さんが言ってた!男に媚び売って金稼ぐキタナイ仕事なんだろ?」


クラスの男子に言われた言葉。


あくまでもクラスメイトであって友達ではない。


お母さんって、水商売やってたんだ…


特にピンとは来なかったけど、とりあえず人に誇れる仕事ではないらしい。


だって、この男の言葉を聞いてクラスメイト達が俺を見てコソコソ笑いながら話し出す。


ここに、俺の居場所はなかった。