「Impossible for me.」
え…?
恋さんが、小さな声でそう呟いた。
"Impossible for me"
"私には無理"
どういうことだろうか
恋さんは、何に悩んでいるんだ?
その呟きは、きっと全員が聞こえたはず。
だけど決して頭の良いと言えない剣と新には理解出来なかったんだろう。
気にする素振りを見せてない。
ただ、右京は違う。
右京は、恋さんを悲し気な瞳で見つめていた。
なぁ右京。お前と恋さんは、一体どんな関係なんだ?
聞いてもどうせ、教えてはくれない。
だから俺たちは、右京と恋さんが話してくれるのを待つしかない。
「ねぇ右京」
「ん?」
右京は、恋さんが来てから変わった。
いや、というか恋さん限定でだけど。
今まで俺たちが呼びかけても顔を向けるが返事をする事はなく要件だけ聞いていた右京。
それがどうだ?恋さんにはちゃんと返事するしきちんと応えもする。
小さな変化だけど、右京が人間らしくなってきてとても嬉しいと俺は思っている。
「やっぱり私、「聞かない」……でも!」
「俺はそんな答え望んでない。」
「でも私には無理よっ」
「お前しかない」
「………………」
何事かと喋っていた二人も右京と恋さんの会話に耳を向ける。
さっきの呟きは、恐らく今の会話と照らし合わせると姫の事だろう。
頑なに姫になる事を拒む恋さん。
俺たちはそれが不思議でならない。

