姫は自由に生きている


恵side


恋さんが希龍と過ごすようになって1ヶ月。


倉庫には活気が出始めた。


面子も最近生き生きしている。


やはり恋さん効果は絶大たるものだった。


剣と恋さんは相変わらず仲睦まじく毎日のように新を苛めて楽しんでいる。


右京は右京で、そんな恋さんの事を毎日飽きずに見つめている。


なにを考えているのかは分からない。


でも、本当は恋さんを姫にしたいのだけは分かっている。


希龍に居るのに、姫にならないのがもどかしくて仕方ないのだろう。


ちなみに希龍に姫が居たのは初代から遡っても琳さんの時代のみ。


そして、その時の姫は 希姫(キキ)と名付けられ神のように崇められていたと聞く。


誰もが希姫に魅了され、誰もが希姫を尊敬し、誰もが希姫の言う事を聞く。


そして、希龍を全国No. 1まで導いたのも希姫だと言う。


まさに俺たちの世界の中で神なのだ。


それは今も語り継がれる伝説。


しかし、希姫の姿は琳さんの時代の希龍しか知らない。


琳さんが引退すると同時に希姫も希龍を去った。


それからと言うもの、希姫と琳さんの伝説は語り継がれるのに、誰も希姫の姿は知らないという。


何処の誰であり、今何処に住んでいるのか。


なにも情報が出てこない希姫に、最早存在していたのかすら分からない。


ただ、琳さんの時代に居た先代方は皆揃ってこう言う。


"希龍を侮辱する者は希姫を侮辱したのと同じ"


だと。