姫は自由に生きている



部屋の外がうるさくて目が覚めた


誰かの怒鳴り声、大きな物音、なにかが破壊される音

久しぶりの"音"に、少し怯んだ


部屋には誰も居なかった
でも、人形に成り下がった使えない頭ではヤツからのヒントでは何も繋がらなかった


でもだんだん煩さが静かになってきたから少しだけ…扉から外を覗くくらいなら許されるかなと思った


ヤツに着せられたワンピースの裾を握って、忍足で扉をそっと開けた


「えっ……」


「おはよう、恋。気分はどう?」


「っ………」


まるで私を待ってたかのように、扉を開けると怖いくらいに美しい笑みを浮かべたヤツが居た


遠くから、『恋!』って懐かしい声がたくさん聞こえた

夢かと思った


「俺からのプレゼント。しっかり受け取ってね?」


最高の演出を考えたんだ、と固まる私をそのまま抱き上げてヤツはそのまま階段を降りた


「み………ん、な」


「「「「「恋!」」」」」


大きな音の原因となったホールみたいな所に降りると、今度こそハッキリ分かった


傷だらけでボロボロになりながらも、敵を倒し続けるのは見た事ないくらい本気の顔をした、私が待ち焦がれてた大好きなみんな


「恋を返せ」


敵を寄せ付けず私とヤツの前に現れたのは、兄ではなく男の顔をした"伝説の希龍5代目総長と副総長"


「恋は俺のだよ?」


そして、焦るでもキレるでもなくこの場にそぐわない美しい笑みを浮かべ続けるヤツは普段と何一つ変わらなかった。異質だった。


「嗚呼、水蘭の負けだね。ザンネンだ」


琳兄と圭介の背後で繰り広げられた抗争は、圧倒的な力の差を見せて希龍が勝った


倒れているのは、水色の華の刺繍が入った特攻服

立っているのは、私が大好きで仕方ないみんな


負けたというのに、まるで予想通りとでもいうようにわざとらしく肩をすくめた笑顔のヤツに寒気がした


さっきまでの煩さはもうない


「もう一度いう。希姫を返せ」


倉庫によく響く琳兄の静かな怒り


「君たちはなにか勘違いをしてる。俺が欲しいのは希龍の地位でもなければ希姫でもない。"杉咲恋"がなんだよ?」


この意味が分かるかい?と静かな倉庫で、1人笑い続けるヤツ


琳兄達は理解が出来ないと言った顔でヤツを見ていた


「でもそうだなぁ…"俺のお姫様"が望むのであれば、返してあげてもいい」


ヤツはそう言って、あっさりと私を下に下ろして開放した


「えっ……?」


「あいつらを捨てて俺と居たいなら歓迎だけど?」


「〜〜っ!!」