「は、なしっ……てよ!」
「ん?」
「も……や、だ……」
「そんなに俺が憎い?」
「あ、たりまえっ…!」
「いいよ。嫌いでも憎くても殺したくてもなんでもいい。だって恋の頭の中は今も俺の事で一杯でしょ?」
「っ……」
「俺以外の事なんて、考えさせてあげない」
目の前にいる男は狂気に満ち溢れている
どんなに暴言を吐いたところで、この男はこうして嬉しそうに頬を緩ませて私を弄ぶ
ここに来てどれくらい経つのか、もう分からなかった
私の肌には消えない赤い華が無数に散らばる
足枷はもうずっと付いたまま
汚れた私を嘲笑うように真っ白なワンピースは、何着あるんだか毎日ちゃんと新しいのに着替えさせられる
飽きもせず毎日私を愛でるヤツに、もうなんの感情も湧かなかった
すぐに助けに来てくれると思ってた琳兄達は、もうずっと来ない
ヤツに琳兄達の名前を口に出すと叩かれるから、考える事すら辞めた
逃げる事も助けを呼ぶ事も抵抗する事も全てを諦めた私が辿り着いたのは
ヤツに従順なお人形になる事だった
幼かった私には、キャパオーバーだったんだ
なのに……ヤツはどこまでも私を追い詰める
「恋、たまには出掛けない?」
「………」
悪魔は、怖いくらいに美しい笑みを浮かべてた
従順な人形は、頷くだけ
「着替えさせてあげるから少しだけ待っててね?」
頷いた私にキスを落とすと、機嫌良く部屋を出て私の着替えを取りに行った
ヤツの考えが読めた事なんて一度もない
でも、唯一言われた事がある
『俺ね、水蘭っていう族の総長してるの。勿論あいつらの事は潰したいけど、でもその為に恋を攫ったんじゃない。これだけは俺の独断』
つまり私がここにいるのは、ヤツの抑えられなかった狂気の行動のせいであって
仲間も全国制覇も関係ないんだとか。
それを聞いた時、ヤツは私を逃してくれないんだと悟った

